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「うわ、うわ、うわー。
北原さん、また髪切っちゃったんですか?!」
新年。仕事始め。
出社した私の姿を見た後輩の小森千晴(こもりちはる)は新年の挨拶をすっ飛ばして絶叫しながら大袈裟に仰け反ってみせた。
「今日から新プロジェクトスタートだからね。
いつものことだろ」
こっちも挨拶は省略してさっさと椅子に座る。
会社的な仕事始めは今日からでも私は昨日から出社して新しい仕事の段取りをつけていたので今さら新年気分にもなれない。
思えばこの仕事についてからまともに正月気分を味わうこともなく、私の頭の中は常に仕事が大半を占めていた。
大半……いや…全部、かもしれない。
「今年がいくら暖冬だからってさっぱりいき過ぎですよ。
その辺の男性スタッフより短いじゃないですか」
向かいのデスクに座る小森は私の髪型がよほど衝撃だったのか目を丸くしたまましつこく食いついてきた。
「いいじゃん別に男より短くったって。
この方が手入れも楽だしいいんだよ。
何だったら坊主でもいいくらいなんだけど」
最後の一言はもちろん冗談だが小森はしっかり真に受けてため息をついた。
「北原さん、男性化がどんどん加速してますよー。
私今年も北原さんの心配ばっかりしてそうなんですけど」
「よく言うよ。あんたの脳内は今満開のお花畑じゃんか。
いよいよ春には綺麗なお嫁さんだもんね。おめでとー」
「うーわー。めっちゃ棒読み」
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