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禁断
それから数ヶ月。僕は高校生になった。姉さんはあれからすぐ結婚した。壊れた関係はなおらないけれど、それでも、僕は幸せだった。
コンコン。
誰かが扉をたたいた。誰だろう。
「どうぞ。」
僕がそういうとある人がいた。いるはずのない人が。そして、僕のなかのあの禁断の記憶が、よみがえってくる。
「こんにちは、京くん。」
「ゆ、優莉ねえさん?」
あれから、姉さんには部屋にきていない。あのことを、隠すために。
「急にごめん。でも、言わなきゃいけないことがあるの。」
姉さんは、そういって、あたりに人がいないことを確認し、僕にいった。
「妊娠、したみたいなの。」
それは、とてもめでたいことだ。が、僕にこっそりいったということは…。おそらく、人に知られてはいけない事情があるということだ。
「…もしかして。」
僕がそういうと、姉さんは意味深にうなずいた。そして
「まだ確定はしてないけど、時期的にね。それだけだから。」
とだけいって、部屋から出て行く。
僕は一人部屋に残され、しばし唖然としていた。これは、禁忌をおかした僕達への罰なのだろうか。
僕はそう考える。そして、ーーーーつい、笑いが込み上げてきた。
「ふふふ…あはははは!」
姉さんにとっては辛いことだっただろう。でも、僕にとってこれは、この上なく喜ばしいことだった。自分でも最低だということはわかってる。でも、どうしても、姉さんにもこのことを忘れてほしくなかった。僕の思いが、届いたのかもしれない。
僕はひとしきり笑ってから、家庭科の先生から返された、僕の人生をーーーー姉さんとの記憶をたどった課題を手に取り、ながめた。
………僕の初恋は、まだまだ続きそうだ。
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