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「姉さん」
貴女が、僕から遠のいて行ったのはいつだろう。
貴女が僕に他人行儀になったのは、いつからだろう。
僕が貴女をそう呼びだしたのは、いつからだろう。
僕が貴女に心惹かれるようになったのは、いつからだろう。
* *
カリカリ…
静かな部屋に響く、無機質な音。
一人、淡々とペンを動かしていた。その時、僕は急にひやりとしたものを覚え窓の外を見た。いつの間にかふわふわと雪が舞っている。通りで寒いわけだ。
時計を見るとちょうど三時をさしていた。自分でも驚くことに、四時間近く休憩なしで勉強していたらしい。
僕は軽く、んー、とうなりつつ背伸びをする。ぽきぽきと心地よい音を立てて骨が鳴った。僕はこの不思議な感覚が大好きだ。休憩ついでに着替えよう。僕はそう思って席を立った。
コンコン
そのとき不意に、部屋の戸をたたく音が聞こえる。はて、誰だろう?
「京くん、入るよ。」
聞こえてきたのは、聞きなれた優しい声。優莉姉さんだ。…そういえば、勉強みてもらう約束してたっけ。
「うん。どうぞ。」
と、僕はそっけなく返事をした。まぁ、ほかに言うことがないからだけど。着替えようか一瞬迷ったが、寒い廊下で待たせるわけにはいかない。
「失礼します。あれ?休憩中?」
姉さんは菓子の乗ったお盆を片手に部屋に入ってきた。そこには手作りと思われるクッキーものっている。
「うん。一通り終わったからさ。」
「そっか。まあ、休憩時間にお菓子食べようと思って持ってきたから、そのほうが都合いいけどね。」
そういって姉さんは僕に菓子類を差し出した。
「ありがと。」
僕はそう言ってそれをうけとった。相変わらず、姉さんの作るクッキーはおいしい。僕がもぐもぐと菓子を食べていると、優莉姉さんは僕に尋ねた。
「そういえば、勉強でわからないところとかあった?あるなら教えるよ。」
そうだった。お菓子を僕にあげる為に姉さんはここに来たわけではないんだよね。姉さんの菓子が美味しくて本来の目的を忘れていた。でも、今のところわからない問題が無いんだよなあ。
「特にないかな。毎回優莉姉さんが説明してくれるし。」
姉さんは説明が上手なので、簡単に理解できる。本当にありがたい。
「そう。まぁ、京くん頭いいし努力家だからね。」
というと、姉さんは優しく微笑んだ。
「そんなことないよ。姉さんがいなかったらこんなにできなかったし。姉さん教え方うまいし。」
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