プレイボール

11/13
前へ
/13ページ
次へ
◇ 「俺たちのチームは今から一年前、甲子園をかけた地区大会決勝を迎えていた。相手はディフェンディングチャンピオンの二条学園。あの夏も伝統の強力打線は健在で決勝までの全試合で二桁安打を記録するなど打ちに打ちまくっていた。  そんな打線相手に、お前は散発四安打で無失点。快刀乱麻のピッチングを披露する。まったくベンチから見ていて惚れ惚れしたよ。  スクイズであげた一点のリードを必死で守り、迎えた九回の裏、ツーアウトランナー二塁。打順は強打二条学園の四番に回る。  ベンチの指示は勝負だった。初球、インコースへ渾身の力で放ったお前の真っ直ぐはものの見事に痛打される。  ボールはレフトポール際を襲った。右か左か。打球は俺たちにとって無情にも、右側を通過しスタンドに着弾した。  そりゃもう、ベンチ含めて頭の中は真っ白さ。まさに呆然自失だった。  メールの通り、その中で最もショックを受けていたのは間違いなくお前だった。三年の引退式にも顔を出さず、部屋に二週間、引き籠った。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加