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背番号一番。このチームのエースはお前しかいないんだ。
回りくどい方法を使ってしまって悪かった。だけどな、予選も近い。
いい加減、目を覚ましてくれや」
◇
二日後、地区大会のブロック予選。
客足のまばらな球場にも、等しく真夏の陽気は注がれる。砂ぼこり舞うまっさらなマウンドに俺は立っていた。背中に、去年と同じ背番号一がある。だが、その若い番号は、あの時とは比べ物にならないほどに重い。
正捕手、武田が俺にサインを送る。試合前の打ち合わせ通り、ど真ん中へストレート。
俺はにやりとほくそ笑むと、大きく振りかぶって思い切り腕をしならせる。ミットの乾いた音が響き渡った。心地よいこの音。
これだ、これなのだ。俺は大きく深呼吸した。
そして、止まっていた時は再び動き始める。
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