第1章

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ロシアに行こう。そう決めたのは映画でロシアの美しい森を見たからだった。いや、僕はただ遠くに行きたかっただけなのかもしれない。戻らないつもりで荷物は置いてきた。食料もこの森の中で調達して行く。大木の葉っぱが太陽の光を遮り、足元の土は湿っていて全ての葉がみずみずしい。青臭い匂いがする。人が自然を神聖視するのは何故か、この森に入って僕は理解できたように思う。ふと見上げると、木の枝に猫が座っていた。どこかで見たような猫だ。濃いピンクと薄いピンクの縞の、あれ、なんだっけ?そう思って見つめていると、その見覚えのある猫はするするとリボンをほどくようにバラバラになって消えた。青虫に煙を吹きかけられて、僕は倒れる。  目覚めたのは自分のベットの上だった。目覚ましを止めながら僕はあの場所にもう一度行きたいと思った。それがロシアの森のことか、あの猫がいる不思議な場所のことなのか、僕にもよくわからない。
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