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アナウンス様の言う通り
朝っぱらから、駅で騒いでる連中がいる。
制服は着てるけどいかにも、本当にそれで学校に行くのかて印象。
周りの迷惑顔もお構いなしに、割り込みに座り込み、奇声バカ笑いお構いなし。
注意すべきなんだろうけれど、何人もいるし…迂闊にちょっかい出したあげく、多勢に無勢で怪我でもしたらたまらない。
誰もがそう思い、今この場だけでのことと諦めていた。
そんな時に響いたアナウンス。
「〇番ホーム、間もなく電車がまいります。皆様、白線の向う側へお進み下さい」
最初は気づかなかった。気づいた後は言い間違いだと思った。
白線の内側って…今から電車が走って来るのに、そこに近寄れってことだろ?
ないないないない。
どう考えても駅員さんの言い間違い。
その筈なのに、そこにいた全員の身体が勝手に動いた。
何十人…いや、何百人という数の人間が残らず白線と線路の間の狭い空間に並ぶ。
当然だけどすし詰め状態。なのに誰も白線の向う…閑散としたホームには出られない。
「電車来ます」
絶望的なアナウンスが響く。
電車が来るって、この位置じゃ、多分怪我をするし、下手をしたら命に関わる!
「電車来ます。一般常識内のルールが守られている方だけ、白線の内側にお戻り下さい」
全身の呪縛が解け、俺は転がり込むように白線の内側に戻った。
周りを見れば、たいていの人が同じようにがらんとしていたホームに戻り、呆然と立ち尽くしたりへたり込んだりしている。
でも、何人かの人間はこちらに戻れず、狭すぎる白線と線路の間にいた。
電車がやって来る。見慣れているし聞き慣れている筈なのに、凄い圧迫感と音がした。
俺から見て白線向こうの連中は、電車の車体が見えた直後、薙ぎ倒されるように前方車両の方に吹っ飛んで行った。
誰も何も言えずにいる中、駅員さんらしき人達がわらわらと現れて、よく見えなかったけれど、吹っ飛んだ連中を運んで行った気がする。
何事もなかったかのように、いつも通りに戻った駅の構内。その場から、バカ騒ぎをしていた連中は一人残らず消えていた。
公共の場で聞くアナウンスは守らなければならない。あと、アナウンスに指摘されるような非常識な真似もしてはならない。
そう固く心に誓って俺は電車に乗り込んだ。
アナウンス様の言う通り…完
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