ああ、これはちょっと美化しすぎですねぇ。

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 ◇  僕は駆け出しの少女漫画家。今年の春に『新人恋愛漫画大賞』を頂き、今や期待の新星として注目をされている身だ。  この作品は僕の体験談を元に描いている。  他人に自分の本性を完璧に隠し偽り続けて生きてきた臆病者の僕と。他人の本性や秘密を曝し出すことを生き甲斐としていた捻くれ者の彼女――これはそんな歪んだ青春時代を過ごしていた二人の男女の恋愛模様を描いた作品である。  はぁ、校了まで時間がないのに大切な告白のシーンに落書きとは困ったものだ。  「美化ではないよ。思い出を風化させないためさ」と僕が呟き修正に入ると、アシスタントからGペンが飛んでくる。  「――チッ、外しました。恥ずかしい野郎です。ならばせめて彼女の名前は匿名希望でお願いします」 ―― 了 ――
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