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私は「はい鍵」と言って、和泉くんの手を取ってそれをポケットから探り当てたものを彼の手の平へと落とした。固まってるけど無視だ無視。
鞄を取って、私は歩き出した。屋上を出て、階段を下りていく。わりとゆっくり歩いているけれど、後ろから何かがやって来る気配はなかった。
昇降口が見えたところで、二人の人物が立っているのを確認する。
「どうだったー遥? あれ、いっしょじゃないの?」
「どうしてひとりなのよ、まさか」
「いや、言ったよ。呆けてたから置いてきた」
ふたりには「告白する」と伝えてあったので、ここで報告を待っていたのだろう。まったく、好きだね君たちも。私が靴を履き替えつつ言うと、ふたりから
「鬼」という言葉が飛び出す。鬼ではないです、女子高生です。
「でも固まった遥とかすごい見たいなあ」
「告白されて固まるなんて相当レアよね」
笑うふたりに、私はけっこう和泉くんのあれな姿を見ているので何とも言えないなあ、なんて思っていると、少し遠くからずいぶんと焦ったかのような足音が聞こえてきた。
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