第二十六話「好きです、付き合ってください」

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 ――これで平等だよね?  そう微笑む男の、何と美しい事か。  しかし。そう。だがしかし。そういう問題ではない。  衆人環視のただ中で。あろうことか告白を披露して。  譲歩してそれを受け入れたというのに、目の前の男は、あろうことか――キス、をして。  最後に。とんでもなく恥ずかしい言葉を止めといわんばかりに添えたのだ。 「――この」 「え?」 「サイコパスヤンデレストーカ色情狂! おまえはちっともわかってねえじゃねーかあっ!!」  ――目立たない努力をしろっ!  そう叫んだ私は、和泉くんの鳩尾に蹴りを入れ、駅までの道を走りに走った。  誰かが「蹴られて笑ってる学園アイドルとか残念すぎる」と言っていた。  誰かが「助け起こされてもにまにましてて学園アイドル怖すぎる」と言っていた。  ――最後にこれまた誰かが「でも和泉くんらしいね」と言っていた。  どうやら、そうらしい。  彼を「学園アイドル」ではなく「和泉遥」と認識する者は、それを「らしい」と言ってのけた。
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