第二話「予感」

2/4
前へ
/310ページ
次へ
 人間には、ぶん、というものがある。ぶん……平仮名にするとなんとも間抜けだ。分相応、不相応、のぶん、である。  特にこの日本において身分制度というものはないものの、皆それぞれに暗黙のルールをおき、その中で分をわきまえ生活している。おそらくこれは学校でも会社でも変わらないものだとは思うが、学生時代のほうがよりいっそうわかりやすいことだろう。それぞれにグループがあり、それぞれに種類がある。昨今はスクールカーストなどという言葉が存在するようだが、まあ、まさしくそれである。もっと噛み砕いて言うと見た目。ぶっちゃけ顔だ。  所謂、イケメンなどと言われる男子。可愛いなどとささやかれる女子。それらにはある一定のレベルをもった人間しか近付かない…というより近付けない。その垣根を越えてしまえば周りから何を言われるかわかったもんではないからである。おとなしいグループはおとなしいグループ同士で恋をし。きらきらしいグループはきらきらしいグループ同士で愛を語る。そう、それは暗黙のルール。その掟を破れば、男子社会はあまりピンとこないものの女子社会では手痛い…というのはあまりにも生易しい表現だろう。とても残忍かつ残虐なおしおきが待っているのは、女子であれば誰にでもわかることだ。どの環境においても必ずしもこれが適応されるわけではないが、学校という箱の中でこの禁を犯すのはなかなかに勇気がいる行為だろう。自分よりも上のグループに身をおいてしまったが最後、奴隷のようにこきつかわれるのがオチである。さもありなん。  まあ、そうならないように、それぞれがそれぞれの所属する場を考え見極め生活をしているわけだが、私はいつも、大変だなあ、と思いつつ、その光景を無責任にさも外側にいるかのようにながめていた。少し離れた場所で、好きなだけ観察を許される傍観者のように。ひとりひとりの肩をたたいて、「ご苦労様」などと言っているかのように。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

283人が本棚に入れています
本棚に追加