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B「大丈夫、寒くない? 今日は冷えるね。ほら、僕のマフラー。これをかけて」
A「あ、その……ありがとう」
暑いとは口が裂けても云えない。こうして厚着をしていないと彼に不自然に思われてしまうからだ。
――あゝ、彼はとても優しい。温かな彼の気遣いに身も心も溶けてしまいそうになる。
そう、私は『雪女』と呼ばれる存在。ヒトの世で偽り生きる、今時の雪女である。
あゝ、時の流れと共に私たちの在り方も大きく変ってしまった。バブルの崩壊以降、苗場のリゾートホテル群が退廃。近年は若者たちのスキー離れも重なり、冬の雪山は閑古鳥が鳴いている。だからこうして暑さに耐えて都会まで降りてきているのだ。
しかし、変わらないものもある。
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