第二話 さすらう村

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あれは20年前の、秋の夕暮れの時だった。 季節はずれの雪に遭遇し、高速道路は一時閉鎖となった。 我々は丁度山道を車で進んでいた。高速道路に向かう途中だ。 閉鎖の知ったのは、山を降りてからだった。 他に道もなく、再び山道を余儀なくされた。 夜空の星が明るい。 今日は満月のようだ。 時々見える車のバックライトのお陰で、それほど走りにくい道ではなかった。 「この先に村があるみたいだ。今夜はここに泊まるしかなさそうだな」 同乗者の柚子が話しかけてきた。 「大丈夫なの。明日のコラムは?」 「来週までのコラムは提出済みだ。それより、柚子の出した企画『暮らしの森』は大丈夫なのか。例の取材許可出なかったんだろ。連載4日で打ち切るつもりなのか」 「まさか!すでに交渉を進めているわよ。それに、初めて任された週刊連載だから、読み応えのあるコーナーにしたいのよ。 絶対成功させてみせるわ。期限は明後日だし、部長には来月までの企画書を提出済みよ。」
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