ファウルボールの行方

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〇藍上大学 学生に取材している結子と松本。 〇柿久株式会社 社員に取材している結子と松本。 〇東都新聞社 デスクで録音を文章にまとめている結子。 録音『卓は1年ですぐレフトのレギュラーになった。でも代りに控えに回った上級生が努力の末取ったポジションだったからさ、そいつショックのあまり不注意でバイクの事故。それでチームがぎくしゃくして卓は孤立無援になったってわけ。耐えられなかったみたいよ』 結子「……軟弱者」 隣の松本がビクッとして顔を上げる。 松本「オ、オレ軟弱じゃ無いっスよ。筋肉だってほら」 ポーズを取る松本を鼻で笑う結子。 〇『東都スポーツ』コラム『ファウルチップ』 高校のチームメイト達は語る。 「二世をかさにきた嫌味な奴」 「特別扱いに慣れたボンボン」 「手抜きしまくりのムカツク男」 見るところは皆見ているものだ。        BY キッコ 〇風間家 居間入口 『東都スポーツ』を読み、つらそうな表情の卓。新聞を丸めてごみ箱に捨て、中に入っていく。 〇同 居間 窓を開け放し、ソファで音楽を聴いている風間(かざま)(かおる)(40)。 笑顔をつくって入ってくる卓。 咳き込む薫。 卓「外気は体によくないよ、ママ」 窓を閉める卓。 はかなげに微笑む薫。 薫「ありがと。でも大分気分がいいのよ」 ショールを薫の肩にかけてやる卓。 入ってくる貢一。 薫「あ、あなた、コーヒー入れましょうか」 卓「ママ、ボクがやるよ」 薫を優しくソファに押し戻し、コーヒーを入れる卓。 微笑む貢一と薫。
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