ファウルボールの行方

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〇地方球場グラウンド(デイゲーム)  レフトの卓に上がるボール。グラブのドテに当て、落としかける卓。 が、二宮がうまくフォローしてキャッチ。 野球放送「おーっと、これは危なかった。二宮の好捕で試合終了です」 二宮にニッコリと頭を下げる卓。 二宮、チッと舌打ちして卓を無視。 〇同 記者席 結子が腹立たしそうに立ち上がる。 結子「今日もガッチガチのひどいプレー」 〇同 グラウンド 引き上げてくる選手達。 いきなり観客の男がフェンスを乗り越え、球場に飛び込んでくる。男は他には目もくれず、二宮に突進する。 男「お前さえホームラン打たなきゃ、今だってファインプレーなんかしなけりゃ、こっちが勝ってたんだ!」 皆、一瞬呆然とし、足が止まる。 二宮も足を止めて振り返る。 男、懐からナイフを取り出し、二宮に飛びかかる。 野球放送「相手チームのファンです! 何てことでしょうか、危ない!」 卓が体当たりで二宮を突き飛ばす。 卓の腕に食い込む刃物。飛び散る血。 ベンチの貢一らが飛び出す。 大騒ぎになる球場。 〇同 記者席 乗り出す結子。呆然として大騒ぎを見つめる。 〇病院 玄関でシャットアウトされているマスコミ勢は大騒ぎ。 「風間卓」の表示の部屋の前に座っている結子。 部屋からでてくる貢一。 貢一「心配無い。浅い傷だそうだ」  ほーっと息をつく結子。 結子「……ほとほとプロ根性のないボーヤですね。商売道具の自分の体投げ出すなんて」 貢一「また叩くつもりか」 結子「当然。『ファウルチップ』の風間卓シリーズ、好評ですから。無論バカ親とのセットでね」 貢一「そう言うなよ。あいつは繊細なんだ」 結子「……母親似ってことですね」 貢一「お前は強いからわからんだろうが」 結子「わがまま勝手な父親似なもので」 頭を掻く貢一。 貢一「悪かったな」 結子「いいえ。球界のドンの弱みを持ってると便利ですから。今後もいろいろと融通きかせてもらいます」 貢一「……昨日テレビドラマを見た。彼女、元気そうだな」 結子「娘もね。……それじゃ私はこれで」 貢一「見舞っていかないのか」 結子「マスコミはシャットアウトでしょ。私だけ入ったら変に思いますよ、卓クン」 貢一「……」 結子「そのうちまた来ます」 歩いていく結子。
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