バックスクリーンは見ている

11/14
前へ
/15ページ
次へ
〇同 校門前 広見の手提げ袋とスヌーピーのノートを手にやってくる結子。 服や髪がヨロヨロのボロボロになってぐずり泣きをしながら歩いてくる男子達数人。 結子「福山広見ちゃんは?」 男子1「知らねえよ。もう帰ったんだろ」 すすり上げる男子達に肩をすくめる結子。 〇福山家 外観(夜) ウロウロ出たり入ったりしている福山と静香。 やってくる結子。 結子に気づいて険しい顔になる福山。 福山「……何しに来た?」 結子「広見ちゃん、います?」 福山「何の用だ」 結子「この前、広見ちゃんが忘れ物したので……」 結子の差し出す手提げ袋を取り上げる福山。 福山「広見はいない」 結子につかみかかる福山。 あわてて止めに入る静香。 福山「広見は学校でオレの職業を隠してたんだと! それがあんたのせいでバレて大喧嘩。そのあと帰ってこない」 結子、顔色が変わる。 結子「帰ってこないって、もうこんな時間……」 福山「二度とオレの家族に近寄るな!」 福山につきとばされる結子。 福山、静香を家の中へ押しやり、自分は外へ歩き出す。 福山「もう一度探してくる。それでダメなら警察に頼もう」 駆けていく福山を見つめる結子。 手に残っている広見のノートに気づき、考え込む。 〇東郷球場 外観(夜) (回想) 球場の外観。柱の陰で膝を抱えてうずくまり、球場を見上げている結子(10)。 (回想終) 〇東郷ドーム 外観(夜) 柱の陰にランドセル姿のまま膝を抱えてうずくまっている広見。真暗な球場を見上げている。 広見の視界を遮るように立つ結子。 慌てて立ち上がり、逃げようとする広見。 結子「どうしてお父さんの職業を隠してたの?」  立ち止まる広見。 広見「……カッコ悪いからよ」 結子「そうかな」 広見「そうよ」 結子「正直に言うものよ。広見ちゃんはそうは思ってない」 広見「……」 結子「自慢したいのにできない……だからなんでしょ? ほら、忘れ物」 広見にスヌーピーのノートを突き出す結子。 結子「これがそう言ってるわ」 プイと横を向く広見。 広見「……いらない、そんな物」 結子「捨てるなら自分で捨てなさいよ」 結子、広見にノートを押しつけ、歩いていく。 結子「返したからね!」 広見、ノートを投げ捨てる。ノートから飛び出す写真が一枚。 広見「何、これ……」 不思議そうに拾う広見。 若い福山が宙に舞い、グラブにボールを収めている色褪せた写真。裏を返すと、「XX年8月5日 サヨナラもぎ取る福山」の走り書き。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加