5人が本棚に入れています
本棚に追加
ナルガ様と別れて4日程。僕は今、最後の山を降りきった。
安心しきった僕は、その場に座り込み空を見上げる。
山脈を越えた僕は実質自由の身だ。しかしそれはこの国を出てから。
罪はなくなったと言えど、この国では元・大罪人である。
そんな人間がこの国でやり直しをはかるのは、とても厳しい。
目指すべきは国内なのだけれど、その前にやらなければいけないことがある。
ナルガ様に言われたアーサー王のご子息たちの救出、そしてトーラ達との合流。
僕とアストフィア家との付き合いは実の親よりも長い。
ナルガ様が両親と幼馴染だった事もあって僕が8歳の誕生日。
父さんと母さんを亡くして以降、アストフィア家で我が子のように育ててくれた。トーラは僕の幼馴染である。
件の王殺しでナルガ様、僕が首謀者とされフォンロッドの家系であった子息達は収容所へ幽閉、アストフィア家もまた追われる身となった。
幸いというべきか、子息達は亡くなった事になっているため民衆達にその存在を明かす事が出来れば、全てをひっくり返す事が出来る。
山脈越えの前に、出発に立ち会ったヘンドリクセン様が教えてくれた。
『1日待て』、『必ず追いつく』僕はナルガ様の言葉を信じて今は疲労困憊のこの体を休ませていた。
「一体なんでこんな事に・・・」
口に出してはみたものの、極限まで追い込まれた僕の精神は思案する事よりも休息を選んだ。
・・・
「ママ、あたし達のおうちどうなっちゃってるんだろうね・・・」
遊牧民達は平原を移動し、新たな場所で住居を構えていた。
そこでトーラは物憂げにエリザに質問した。
「大丈夫よ。きっとすぐに帰れるわ。」
「うん。あそこにはみんなの思い出がたくさん詰まってるから・・・なくなるなんて考えられない。」
トーラの手に自然と力がこもる。
「トーラちゃん・・・」
そんなトーラをみて、ヘレナは肩を抱いた。
「エリザ。何があってもあなた達は私が守るわ。あなた達の家も、フィニ君の家も。だから今は彼らを待ちましょう。」
「ありがとう姉さん。」
エリザはそういって、静かに目を伏せた。
最初のコメントを投稿しよう!