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翌朝。
鳥のさえずりとともに、朝日が差し込む。
「ん。朝か。」
その眩しさに僕は目を細めた。
結局ナルガ様は、現れなかった。
待ってもいいならこのまま待ちたい。
でもナルガ様は、1日だけと言った。
僕は覚悟を決めて、再び歩き出した。
ミカ様、ネロ様はここから南西に向かったエンドフィル収容所の中にいる。
それにはまずこのサスティナ平原とメトフィル荒野を歩かなければならない。
「馬さえいてくれたらなー」
と最初は思っていたものの、叶わぬ願いだと知ってすぐにあきらめた。
見渡す限り草原が続き、道中にはモンスターや動物達しかおらず人の気配はまったくない。
突如、こちらに向かって奇怪な声をあげるモンスターが現れた。
「-ッ!!。グレートマンティス!!・・・でか。」
カマキリがそのまま巨大化したような姿。
僕の倍以上の背丈はさることながら、胸元に構えられたその前足はまさしく鎌のよう。
「ピギギ。」
すると一方の前足を軽く、振り上げた。
「な!?」
その動作に、反射的に身をよじる。
「・・・真空・・刃?」
僕の膝ほどまであった草たちはグレートマンティスの振り上げの直後、足首ほどまでに縮んでいる。
「ピギ。」
グレートマンティスは大きく出たその双眼で、僕を見ていた。
『油断はするな?』
僕の頭の中でナルガ様の声が響く。
「もちろんです。」
僕はその声に返答し、剣を構えた。
グレートマンティスは再び、前足を僕に向かって振り上げる。
-ッシュン。
刹那聞こえる風切音。
僕は再度身をよじり体ごと避ける。
「お見通しだよ。次はこっちの番だ!!・・・つむじ風!」
-シュババッ!!
「な!?硬い!?」
放った剣技は、グレートマンティスの表皮を軽く傷つけるだけだった。
「ピギ?ギギギ・・・」
すると、グレートマンティスは翅を羽ばたかせその鎌を広げ、突進してきた。
-ギィィィィン!
「くそ!」
とっさに出した剣と鎌が交錯する。
グレートマンティス。
昆虫同士の遺伝子操作によって生まれたモンスター。
見かけ通りカマキリがベースなのはわかっているが、もう一方がわからない。
しかし僕は、山脈越えでの経験を思い出す。
「切って駄目なら・・・は!」
一度交錯していた鎌を弾き、そのまま上に跳ぶ。
「狼爪深々!!」
目論見は当たった。
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