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「ピギィィィ・・・」
突き立てられた剣はグレートマンティスの頭を両断した。
断末魔とともに血のような赤黒い液体を垂らし、力なく倒れる。
「はぁ。はぁ。」
僕は剣に付いた液体を振り払い、鞘に収めた。
絶命したグレートマンティスを見下ろし、その場を去った。
・・・
「はい。では報酬は500G、達成の証はライオンクラゲの棘、期間は明日から1週間。よろしくお願いします。はぁ・・・」
王都イザニアは、アーサー王とその子息達が騎士団の手にかけられたというニュースを聞き、一時は混乱に陥ったがセビリア家の迅速な対応により日常を取り戻していた。
王宮派遣員のアニもまた、職務であるクエスト受注を行っていた。
イザニアを含め、ルスカリア王国はアーサー王が統治していた体制をそのまま残し、民衆の生活に特に影響はなかった。
「アニさん!お疲れ様です!!交代ですよ。」
派遣員のアニに後輩から交代を告げられる。
「あれ?もうそんな時間かー。じゃああと宜しくね。」
そう言ってアニはその場を後にした。
晴れやかな青空、吹き抜ける風、街行く人々の活気、いつもと変わらないイザニアがそこにはあった。
「アー・・・ブへ!!」
突如アニの背中を覆う黒い影。アニは影越しにその人物を確認すると身をかがめた。
力の行く末を失ったその女性は、勢いのままつんのめり、屈んだアニにつまずいて顔を地面に打った。
「普通に来なさいよー。ほら、立てる?」
アニはその女性に呆れながら言葉をかける。
「ふふふ。上達したわねアニ。次はうまくいかないわよ?」
「ラフィ。あなた仕事は?」
ラフィと言われた長身の女性は自身の鼻をこすりながら不敵に笑っていた。
「て・・・店長がしばらく休んでいいって!ここに勤めるだけが人生じゃないんだから他の仕事もこれを機に見てきなさいって!!」
ラフィは自慢気にアニにウィンクした。
「ラフィ・・・あなた派遣員に戻ったら?それってたぶんクビだよ?」
アニの溜息混じりの言葉に、ラフィは涙ぐむ。
「えっぐ!えっぐ。あたしだって真面目に仕事してたもん!!たまにお客さんと会話が弾んじゃってただけだもん!!アニーー。だすげでー!」
ラフィはたちまち涙を流し、アニにすがりついた。
「はいはい。ここじゃなんだし。カフェにでもいこ?」
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