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「で、どうしたのよ?」
イザニアにあるカフェ【フロワージュ】。開放的なテラス席に落ち着きのある木造りの店内。
平日の昼間という事もあって店内は比較的空いていた。
アニとラフィは、屋内のテーブル席に腰掛けていた。
「別にあたしのせいじゃないもん!!」
ラフィは頬を膨らませ今回の仕事先の店長の指示に不満をこぼす。
「ウェイターってお店の顔でしょ?だから失礼があっちゃいけないと思って、話しかけてくれるお客さんがいっぱいいるから話してたの。そしたら裏で出来た料理が出せなくって、店長が持ってきたところに・・・楽しそうに談笑してるのを見られて・・・」
悲しそうにうつむくラフィに、アニは同情を覚える。
ラフィにはアニと同じように王宮派遣員をしていた。
王宮派遣員とはルスカリアで発生するクエストの受注を一挙に請け負う窓口である。
クエスト自体ルスカリアの国民で、条件が合えば誰でも受注出来、その人種はさまざまである。
窓口に立つ人間は容姿が整った女性が多く、故にちょっかいを出す人間が多かった。
あるときそれに業を煮やした国王が、お触れを出し民衆はその恐怖におののいた。
以降は誰も派遣員に手を出すことなく、質素なやり取りが行われていた。
ラフィは年頃を迎え、【このままではまずい!】と一大決心。
派遣員を退職し、飲食店のウェイターに就いたのである。
元・派遣員という肩書き、底抜けに明るい性格もあってラフィはたちまち店内の人気者になったが、それ目当てに来る客も多く仕事そっちのけで会話を楽しむ姿を見て、お店の店長は別の仕事に就くようラフィに提案したのである。
「あたしだって、話したくて話してるんじゃないのに・・・」
「しょうがないよ。この間まで現役だった派遣員が、行けば会えるんだもん。でも、ほら!いい機会だよ!もっといい仕事があるって。」
うつむくラフィをアニはやさしく励ます。
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