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「やっと平原を越えたか。あとはこの荒野を・・・」
僕はサスティナ平原を越え、メトフィル荒野に来ていた。
先ほどの平原とはうってかわって、荒野は草がない。
気温は変わってないはずなんだけど、目の前の褐色の大地に照りつける太陽が自然と体を火照らせる。
視界のはるか先には薄暗い雰囲気の建物が見える。
「あれがエンドフィル収容所か・・・」
かすかに見えるその建物は、その特性からか心なしか空気が沈んでいるように見える。
「もっと近くで見たら、どれだけ暗いんだろうな。」
僕は視界の先の建物にそんな事を思いながら、歩いていた。
「ブォーン。」
歩いていると、動物の群れが目に入った。
「野良牛だ。初めて見た。」
そこでは飼育されていない牛達が、悠々自適に過ごしていた。
ある牛は地面に寝そべり、ある牛は仲間の体を舐めている。
国内では自然に生きる動物達がこうして思い思いの時間を過ごしていた。
モンスターもしかり。
先ほどのグレートマンティスのように、こちらに命の危険があれば別だが、人を襲わないモンスターを一方的に狩るようなことは人間もしない。
モンスターも裏を返せば人が実験の果てに生み出した生物である。
動物とモンスターは区別をされているが、特別環境を荒らしたりしない限りは人から見れば動物と変わりない。
僕達は実験の果てに生まれた彼らへの同情も込めて、なるべく共存しようと生きているのである。
「あ、ホークホエール!すげー!!」
突然地面を覆った影に気づいて顔を上げると、巨体が自由に空を飛んでいた。
鷹と鯨の遺伝子操作によって生み出されたモンスター。
「こんななんもないところでもいるんだなー」
僕は、そんな光景に目を奪われつつ呟いた。
次第に収容所が近づき、より一層闇が濃くなる。
罪人の怨念か、はたまた犯した罪の悲しみか。
荒野の端にそびえるその建物は、不気味にその姿を現した。
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