栄華の衰退

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「フィニ。大丈夫か?」 「えぇ・・・ナルガ様は大丈夫です?」 「私の事はいい。もう少し休んだら行こう。今日中にここは越えたい。」 「はい。」 僕はルスカリア王国騎士団長、、、いや元・騎士団長フィニ・ラグナ。 そして隣を歩くは元・騎士王ナルガ・アストフィア様。 6年前、16歳でルスカリア騎士団に入団し、22歳を迎えた今、王殺しの罪をナルガ様とともに背負わされその肩書きを剥奪された。 そして、王都イザニアの北にそびえるザラ山脈、通称大罪山脈を歩かされていた。 ルスカリアで罪を負ったものは、誰もがこの山脈を歩かされるわけではなく、窃盗や強盗などそれなりの罪を犯したものは、王国内にある収容所へ送られる。 しかし殺人やそれに近い犯罪を犯した者は、この山脈を歩かされ力尽きれば死、生きて越えることが出来れば罪は科せられないが、国外追放で新たに人生を送ることになる。 言ってしまえば、遠まわしの死刑判決である。 即死刑もあるのだが、亡きアーサー王の後、その座についたアーデルハイト・セビリア・ルスカリア様が「慈悲をくれてやる。」として僕らに山脈越えを命じたのであった。 しかし結論から言えば僕らは無罪である。 王族の政権争いに巻き込まれた末路。 ルスカリアの王家は初代の王が3人の子をもうけた。 ひとつはある時代から長らくその政権を握ってきた先代国王のフォンロッド。 二つ目は政権を握り続けるフォンロッド家に業を煮やし、事あるごとにその政権を我がものにと目論んでいたユーフェリア。 三つ目はその両家を取り持ち、友好を図ってきたセビリア。 初代国王が亡くなった後、3人の子は初代の遺言に従って一定期間ごとに持ち回りで国を統治する事を決めた。 いつしか時は流れ、ユーフェリアの私利私欲に国が疲弊を迎えると、それを危惧した両家はこのユーフェリアを押さえようと共謀した。 フォンロッドが表で、セビリアは裏で・・・そうしてユーフェリアを押さえる事に成功すると、知略に長けたフォンロッドが以降、統治を続け今の豊かなルスカリアが生まれた。 そして、アーサー王の死をきっかけに・・・というよりアーサー王の謀殺によりセビリア家が新たにその座についた。
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