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その後は、僕らがここにいる通りである。
アーサー王の死は、騎士団の一部によって謀られたものである。とされ、比較的アーサー王に近い者達が次々に収容所や山脈越えを、そしてフォンロッドのご子息達は自由を封じられ、収容所に送られた。
ヘンドリクセン様とルイナス様は、もちろんこれがユーフェリアとセビリアの陰謀だとわかってはいるものの、確たる証拠をあげることが出来ず、王に仕えていた執事としてそのまま彼らに従事している。
「ナルガ様、この山脈を越えた後は、いかがされるのですか?」
山脈越えを命じられて半年。僕達は山脈の一座クラナダ山まで来ていた。
この山脈は6つの山と、1つの火山がある。クラナダ山はその中の5つ目。
この後のセレ山、ユウラ山を越えれば山脈越えは果たされる事になる。
しかし、どの山も環境は厳しく『越える』事よりも『生き延びる』という考えのもと、その足を進めていた。
道中に現れるモンスターや動物を狩り食料を。その血を水分としてすすって生き延びてきた。
「まずはネロ様とミカ様を助ける。私が誓った忠誠は国と同時にアーサー王でもある。彼らの謀殺でアーサー王が亡くなった以上、やつらに仕える義理ない。そしてこの醜い争いを終わらせる。」
ナルガ様の強い決意は表情にも表れていた。
紺碧の目は、この過酷な状況に屈せずその先を見ている。
僕もまたその言葉に頷いた。
「エリザ様とトーラは大丈夫ですかね。」
「あぁ。こんな状況になった時の為に、ある者を向かわせるようにしておいた。備えあれば憂いなし、とはまさにこの事だな。」
そう言って、ナルガ様はこんな状況下でも冗談交じりに笑った。
「一体どなたを?」
「ヘレナだよ。」
「ミストレアの方・・・でしたっけ?」
ナルガ様の言った『備え』
僕は答えを聞いてそれが事が起きた時の対策というよりも、起きてしまった後の彼女達の身を守る安全策だということを知った。
「お前は話した事ぐらいしかないか。いやはや・・・あの者達の武力は私達の剣技ですら、太刀打ち出来るか怪しいものよ。」
「僕自身、それを見たことはありませんが・・・噂はかねがね。」
すると、前を歩いていたナルガ様は歩みを止めた。
「フィニ。剣を構えろ。お山の大将だ。」
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