栄華の衰退

6/10
前へ
/95ページ
次へ
「エリザ、トーラちゃん。おはよう。牧場の方が、今日ここを移動するって。私達もお手伝いしましょう。」 「えぇ。」 「はぁい。」 ルスカリア国内のどこか。アルフィン牧場。 王都イザニアは北を除く三方位をカグリの森という森で囲われている。 そしてイザニアの北と、カグリの森の先にはサスティナ平原という広大な平原が広がっている。 カグリの森も広大だが、この平原に比べるとまだ優しいもの。 ナルガは万が一自分の身に何か起きた時、お前達に危険が迫ったとき、そこに存在する遊牧民達にまぎれて私を待て。とヘレナそしてエリザ、トーラにあらかじめ指示していた。 ヘレナとエリザは初対面ではない。姉妹である。 ナルガと出会う少し前、ミストレアの家系であったエリザは、王宮の使用人として従事していたのだが、このイザニアで救われない子がたくさんいると知った彼女は、その子達の力になるべく王宮を出てシスターとなった。 今回の件で、ヘレナが家に訪ねてきた真意をすぐさま悟り、そのままトーラと逃げてきた来たのである。 遊牧民はその平原内で生活し、長くそこに居座ることは無いため身を隠すにはうってつけだった。 ナルガやフィニが、山脈越えをしている間、こうして2人が現れるのを待っているのであった。 ヘレナはナルガに言われた事を頭に、アーサー王の死後、すぐさま動いた。 ミストレアの人間は王族の仕える身。 王族が変わったからといって、主を選ぶことは出来ないミストレアの者達は仕方なく仕えるしかなかった。 ヘレナ以外の者は、王が変わった今も王宮の家事仕事に従事している。 「必ず戻るから。あなた達はその時まで、待ちなさい。」 家事室長へレナ・ミストレアの言った『その時』を信じて。 「姉さん。ほんとにありがとう。」 エリザとヘレナは再会を喜ぶのも束の間、遊牧民と合流し今はその時間に身を落ち着かせていた。 「いいのよ。あなたにあえて嬉しいし、トーラちゃんもおっきくなって・・・2人が無事で居るとといいわね。」 ヘレナの言葉に、エリザは目を伏せる。 「心配だわ・・・」 「大丈夫よママ!!あんなことでへこたれる騎士なんてたかが知れてるもん!2人がそんなじゃないってママが一番知ってるでしょ?」 「ふふ。それもそうね。」 親子の会話に、ヘレナも口を緩めた。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加