栄華の衰退

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「ピギャアァァァァァ!!」 断末魔と共に僕とナルガ様の足元には、大量のハーピィの死体が転がる。 成人女性の上半身に羽毛で覆われた四肢。 禁忌の配合。人と動物の遺伝子操作。 王国を含め、世界ではモンスター研究はとりわけ幅広く行われている。 しかし、とある国では禁忌に手を染め人を使ったモンスター研究が影で行われている。 ハーピィもその一種だった。 「はぁ。はぁ。これで全部ですかね。」 「おほん!・・・だといいが。な。少し休もう。」 ハーピィは女性には目もくれず、男が巣の付近を通ると美しい歌声と共にその姿を現す。 そして捕まったが最後、繁殖を強制され使い物にならないとわかったら、髪の毛1本残す事無く、餌となる。生きたまま。 濡れ衣で山を歩かされ、その挙句ハーピィに食われたとあっては末代の恥だ。・・・もっともその代を継ぐ子供もいないのだけれど。 そんなやるせない状況に辟易しながら、今僕らはクラナダ山を越えた次の山、セレ山を歩いていた。 「ここは越えられても・・・次だな。」 ナルガ様の懸念はもっともだった。 このザラ山脈が大罪山脈と言われるように、ここの山にはひとつひとつ意味が含まれる。 ナルガ様が言った『次の山』、ユウラ山。罪人が踏み入れる最後の山にして、最大の難関。別名強欲の山。 罪を犯して尚、生きようとする罪人の強欲さに、山もまた強引にその命を付けねらう。 一度誰かが通ったからといってそこに安心は無く、同じ道を通ろうとすればたちまち道が崩れ、奈落の底に落ちる事だってある。 そんな環境からか、モンスターはもとい動物1匹すら存在しない。 「そうですね。・・・でもこんなとこで朽ちるほど僕もお人よしではありません!必ず彼らの所業を世に晒して、フォンロッド王家を再び蘇らせます!」 僕の言葉にナルガ様もうなづいた。 「そうだな。私も同じだよ。きっと長らく押さえ込まれた反動だろう・・・彼らからは私利私欲しか感じない。ミクナもまたセビリアの手によって出てきた以上、この国はフォンロッドの志が無ければまた繰り返す。それは多少の犠牲を出したとしても、私達がやらなければ国が堕ちる・・・」 「どこでもお供します。もう地獄は見飽きたので。」 僕の言葉にナルガ様は顔を弛緩させた。 「ははは!お前のその軽口はラキそっくりだ!」
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