栄華の衰退

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今日僕らは、セレ山で夜を明かす事にした。 夜といっても、あたりが重い空気で日も差し込んで来ないため、時間の感覚はすでに無い。 わかりやすく言えば、疲れを取るための長時間の睡眠。 山では360度命の危険が伴う。 モンスター然り、自然の脅威然り。 寝るにも神経をすり減らすが、消耗した神経を回復させるにはやはり睡眠が一番だった。 最後の山に備え、出来る限り疲労を回復させる。 何日かけようと、生きなければならない。 そして国が王達の私利私欲の為に堕ちてしまうのを防ぐために、こんな山越えに何日もかけられない。 僕もナルガ様も早々に目を閉じていた。 ・・・ 「姉さん。俺はあいつらを許さないよ。父さんを殺し、あまつさえフィニやナルガ様まで・・・ヘレナだって!サルージャは元気にしてるかな?」 「ネロ。大丈夫。ナルガ様もフィニも必ず私達のもとに現れる。信じましょう。」 エンドフィル収容所。 イザニアから西に歩いて1ヶ月ほど。 それなりの罪を犯した罪人達が収容されるその場所で、アーサー王の子息、姉のミカ、弟のネロは幽閉されていた。 民衆達の間では、この一件は騎士団が目論んだ謀反であり、その首謀者として騎士王ナルガ・アストフィア、そして手を貸したのが騎士団長フィニ・ラグナである。と王宮から聞かされていた。 また、王の子息であるミカ、ネロも彼らによって謀殺されたと。 王殺しとして民衆は彼らを反逆者と呼んだが、一部ではなにか腑に落ちない者たちもいるのは少数であるが事実である。 今は侮辱を込めてつけた反逆者という言葉が、いつしか尊敬が込められた反逆者に変わることは、この時誰も予想していない。 ミカはこの時20歳。そしてネロは18歳。 2人は付き添いの使用人、ヘレナとサルージャにより逞しく成長した。 以前は勉強を極度に嫌っていたネロも剣を取りながら、執政について学を修め、ミカもまたネロの支えになるため生まれながらに身についていたその力をひた隠し、影でその力を磨いた。 「ふふ。ユーフェリア、セビリア・・・ともに確信犯ね。私達を殺さなかったこと、後悔させましょう。ネロ、だから今は待ちましょう。同じ志を持つ彼らがじきにくるはずです。」 ミカは猛る弟を静かになだめた。 「うん。父の敵は必ずとる。」 ネロは静かにその目に炎を灯した。
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