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「ジーンも起きろって。休みだからっていつまでもゴロゴロしてんなよな」 「どの口がそんなことを言ってるんだ。お前の春休みはもっと酷いもんだろう」  そう言われてしまえば何も言い返すことができない。自覚は十分にあるつもりだが、自分が起きているのにジーンがまだベッドの中にいるというのが気にくわないだけである。  そもそも今日の買い物へ行くのに気が進まないというのが前提にあるからだろう。母親の買い物に付き合ったあとは、去年母親の治療を担当してくれた父親の友人でもある医師の三田と一緒にランチをすることになっているからだった。  母親と三田はあれから親密になったらしく――とはいっても友人として親しくなった程度だが、三田の母親に対しての好意が明け透けなだけに陽聖としては複雑で、一緒にランチなんて正直嫌だった。だがそれに気づいていない母親は父親の友人として、自分の治療をしてくれた医師として尊敬しているらしく良好な関係を築こうとしている。そんなところにこうして陽聖は呼ばれるのだ。
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