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 ジーンが日本に戻ってきてすぐは実家で母親と二人で暮らしていたのだが、ジーンの強い希望と自分の希望もあり今は母親を実家に一人残してこの七条邸で暮らしている。近い距離にあるからいつでも会えるが春休みということもありこうした連絡が時折きていた。  陽聖が玄関を開けたのとジーンが一階へ下りてきたのはほぼ同時で、ジーンに見送られながら実家へと向かった。  母親の買い物に付き合い荷物持ちをさせられ、さらに気の進まないランチに付き合わされて実家へ帰りついたのは夕方近かった。 「ありがとう陽聖、助かった。こんなに持って歩くの大変なんだもの。やっぱり男手がないとね」 「そりゃよかった。こんな俺でも役に立てて」  どうせそのくらいしか役に立てませんよという皮肉を込めてみたが母親には通じない。買ってきたものをてきぱきと片づけながら、そういえばと切り出されて顔を上げる。 「渡しておこうと思ったものがあったんだった。ちょっと待っててね」  片づけの手を止めるとすぐ側のタンスから何かを取り出し、テーブルに突っ伏すようにだらしない格好の陽聖の元へとやってきた。
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