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「はいこれ。ずっと忘れてたんだけどね、夢でお父さんが陽聖にあげてくれって」 「えっ?父さんが?」  渡されたのはどこかの鍵らしい。無くさないようにかペンギンのキーホルダーがついている。 「そう。普段は出てくることもないのに急に夢に出てきてね。抽斗を開けてこの鍵を取り出すのよ。それで、生前陽聖が大きくなったら渡すんだって言ってたのを思い出してね。それが今だって教えにきたみたい」  不思議なこともあるもんだ。陽聖が幼い頃の出来事を夢に見た日、母親は父親が夢枕に立ったと言う。 「へぇ……。で、これってどこの鍵?」  指で弄びながら、小さいからロッカーかなんかの鍵だろうかと見当をつける。 「それ貸金庫の鍵よ。ほら、あの駅裏の銀行の。お父さんが生前大事なものをあそこにしまってたの。だから亡くなったとき親戚の人たちにあれこれ日隠家のことが書かれたものを持っていかれたときも、本当に大事なものは無事だったってわけ」
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