第1章

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俺は不治の病に犯されている。脳の深い部分に腫瘍ができ手術で取り除けないらしい。しかもだんだんと大きくなって、もってあと一年の命だと言われた。 家は超金持ち イケメン 彼女も友達もたくさんいる なぜ、俺が死ななければいけないんだ。 世の中には死んだ方がましな人間がゴロゴロしているというのに。 「中 己自(あたり こうじ)さん、採血の時間です」 今日も看護士が無意味な採血をとりにやってきた。 死ぬ前の人間から血を採って何がしたいんだ。 暇だから俺は携帯を立ち上げた。 そこには一通のメールが届いていた。 送り主は…俺? 日付が10年後の俺からメールが届いた。 「来年死ぬのに10年後からメールが来るとか…」 冷たい何かがほうをつたう。 俺は携帯を投げ捨てた。 その音を聞きつけて看護士が駆けつける。 「どうしました?」 「何でもない」 看護士は落ちていた携帯を拾い上げ、枕元に置いた。 看護士が出て行ったので、また携帯を投げ捨てようとしたとき画面が目に入った。 拾い上げるときにたまたまボタンを押したようだ。そこには 『あなたは10年後元気に暮らしていますよ』 再び携帯を投げ捨てた。 一年後 俺は死んだ。脳が腫瘍に圧迫されあっけなく死んだ。 10年後 俺は生きている。 俺と言っていいのかわからないが、生きている。 あの血液を使ってクローンを培養し、俺の脳の情報を電気信号としてパソコン上に保存し、携帯の私用歴や俺の普段の行動などを数値化してクローンの脳に入力すると俺が出来上がるというわけだ。 あのメールの意味がわかった。 10年後生きている。 確かに生きている。 唯一違う所が一つある。 「顔がブサイクだ」 次の日、俺は自殺した。
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