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「星宮の会社には、もう連絡は入れてるから心配はいらないよ?」
「訴えられたくないなら、私達に着いてきて」
さらりとお膳立てをしていた小司と、とんでもない脅しをかけてくる小崋。
僕は……もう、従うよりほかなかった。
渋々と二人に着いていく僕。
せっかくスーツでビシッと決めて、新たな生活に意気込んでいたというのに、出鼻を挫かれた気分だ。
いや、実際に、この二人なら、わざと僕の出鼻を挫く絶好のタイミングを狙っていた可能性もある。
そんな何とも言えない恐ろしさに身を震わせていると、二人の足がピタリと止まる。
「っ、着いたのか?」
突然の停止に、僕は当然のことながらそう尋ねる。
横道に入ったわけでもないので、真横に桜の木がある。
二人の頼みと言うからには、廃墟とか、廃病院とか、自殺スポットなんかに連れていかれるものだと思っていたため、あまりの近さに疑問符を浮かべる。
が、返ってきた答えは、僕の想像の斜め上を突っ走っていた。
「いや、そうじゃないさ……ただ……」
「星宮、また沢山、呼び寄せてる」
『何を』という言葉は、長い付き合いである僕らには不要だった。
ソレは、僕には見えないもの。
ソレは、僕が最も苦手とするもの。
ソレは、人間の成れの果て……。
「は、ははっ……う、嘘じゃ、ないんだよな?」
乾いた笑い声を上げながら、僕は二人に確認する。
「ボクらが嘘を言ったことがあるかい? あっ、またご老体が憑いた」
「星宮にそう思われてたのなら、心外。あっ、今、星宮の腰に男が抱きついてる」
小司と小崋は、当たり前のように、ニッコリと僕の言葉を否定し、なおかつ、頼んでもいない状況説明まで入れてくる。
ここまでの発言で、予測できる人もいるかもしれないが……この二人は、霊が視える。
そして、ついでに言えば、二人は霊の除霊や浄霊することもできる家系の一族だったりもする。
「……ごめんなさい、お願いします、祓ってください!」
僕はどうやら、昔から幽霊にとって上質な獲物らしく、様々な場所から幽霊が憑いてくるらしい。
……ちなみに、僕の両親も視える人達なので、赤ん坊の頃から、この二人の家の人にはお世話になっている。
そういう意味でも、僕はこの二人には逆らえない。
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