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即座に頭を下げて頼む僕。
恥とか外聞とか、気にしてられない。
毎日ラップ音に怯える生活なんて嫌だった。
「何を言ってるんだ星宮。ボクらが君を助けないわけがないだろう?」
「そう、ちゃんと助ける。代金は、今度食事を奢ってくれたらいい」
僕が取り憑いた幽霊を祓うように頼むと、二人は快諾する。
お祓いの対価に関してだけは、絶対に無茶な要求はしてこないのだから、ありがたい。
悪魔の中にも良心は存在するのだ。
「それじゃあ、除霊も含めて早く行こうか」
そんな小司の言葉で、僕はまた二人に着いて歩く。
住宅街の中へと足を踏み入れ、どんどん人の数が少なくなってくる。
そうして、辿り着いたその場所は……。
「……喫茶店みたい、だな」
いや、遠目にもあれは何だろうとは思っていたが、まさかここが目的地だとは…思いたくなかった。
住宅街の開発が途中で止まり、ポツリポツリとしか家が建っていないそこに、この建物の存在感は異常なほど発揮される。
木材建築のその建物は、まるでヘンゼルとグレーテルに出てくるお菓子の家のようにメルヘンチックで、ステンドグラスが屋根の近くに埋め込まれている可愛らしい建物だった。
「外観は……まぁ、言わずと知れた小崋の趣味だから気にしないでくれ。ここがボクらの店だ」
「はっ?」
げんなりとした顔をしていた小司の言葉。
ただ……。
今、何かとてつもなく聞き捨てならない単語がなかったか?
「さぁ、行こうか、ボクらの店に!」
『ボクらの店』という言葉がどんな意味を持つのか、深く考える前に、僕は二人に両腕を掴まれて歩かされる。
左右にそれぞれ、ピンクと緑の丸いノブがあり、二人はそれを片手で握り、僕の方を振り向く。
「「さぁ、始めよう」」
「えっ?」
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