はろーはろー

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 資料室の前を通る人間の気配には気が付いていて、だからその人影が通り過ぎた後に扉を開けて廊下に出る事にした。  立付けが悪い。特に音を消す必要性も感じなかったのでそのままがたりと音を立てて資料室を後にする。  その音を聞きつけたのか、ふわ、と黒髪を浮かせながら女性がこちらを振り返った。  ばちり。目が合う。 「――――――――――!!」  途端彼女は、声にならない悲鳴と共に、大きく後ろへ飛び退った。  まるで敵に不意打ちを掛けられたような反応だ。  かすかに眉を潜めると、女性ははっと気付いたようにぱたぱたと両手を振った。 「あっ、ち、違うんよ! ちょっと驚いただけ! 不意打ちで! びっくり! して! だ、だってお、男の人じゃったけ!」  ふぅん、と目を細める。  軍に所属しながら男性を苦手としているらしい。難儀だろうに。  自分は怯えられようが逃げられようが叫ばれようが特に気にならないが、調子の良い阿呆に目を付けられたら大変だろう。  できれば覚えておいてできる限りフォローをしてやりたいものだが―― 「ちちち違うって男の人が無理なだけで悪気はないんよ! 今も迷っとっただけでそ、そんな睨まんでもええじゃろ!?」  悲鳴のような女性の声で、ようやく勘違いされている事に気付いた。  いや、これは自分が悪いんだが。  無駄にきつい顔付きはこういう時に不便だと思う。
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