第1章

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ピピピピッ 遠くで鳴り響く機械音に、意識がふわり浮上する。 ゆっくりと目を開けると、見慣れた白い天井が視界一杯に広がった。 夢…か…… 夢だと分かった瞬間、大きな溜息が口から漏れた。 今まで夢なんて起きれば忘れているものだったが、今回の夢は何故か鮮明に覚えている。 …僕のあんな笑顔、初めて見た。 笑顔の自分は小さい頃の写真で散々見てきたけど、それとは違う。 何も知らないからこその無邪気な笑みではない、知っていてなお屈託無く笑える強さがあった。 笑った顔なんていちいち鏡で見たりしないけど、断言できる。 今の僕にはあんな笑みはできない。 未だに鳴り響く無機質な音。 その不快な音にまた溜息を吐いて、僕は頭上に手を伸ばす。 目覚ましの頭を押すと、パコッという間抜けな音と共に部屋が静まり返った。 無機質な音と引き換えに、鳥のさえずりが窓の外から朝を告げてくる。 何時もならこの可愛らしい声を子守唄に、 また夢の世界へ旅立つのだが、今日は違う。 呑気に寝てなんていられなかった。 夢のせいだ。 気になった。 …自分の脚があるかどうかが、無性に。 僕は緩慢な動作で身体を起こす。 お気に入りの黒いカバーの掛かった掛け布団。 僕は黒いそれに釘付けになった。 ただの夢だとはわかっている。 けれど、何故か胸騒ぎがした。 僕は恐る恐る布団に手を掛ける。 いつもより少し速く鳴る鼓動が耳についた。 僕は手に力を込めて、ガバッと一気に布団をめくる。
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