直昆(ナオビ)を求めて

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        私は今も待っている。 この世界のひとりの人間に変じて。 死ぬことも出ない。 待つことしか出来ないのだ。 ・・ー 5年前の秋           ・           ・ 「ボス、いつまで拗ねてるんですか?いい年こいて」 『私は、まだ25です。いい年じゃない!」 「へ~そういう設定ですか?」 『………』 「じゃ、私また行ってくるわ。匂いをたどってね。」           ・           ・           ・ どこにあるんだ直昆の痕跡。 この世界に着いた時に感じた香。 もしかしたら直昆はこの世界のどこかにいるのか…… この世界の至る所を端から捜しているのだが、香はあっても痕跡がない。 直昆を捜すのに拠点を作らないと思い、この社会で生活するための場所をつくった。 会社というものを立ち上げ、私の手足になるものをつくった。            ・            ・            ・ この世界に止まって4年と言う名の時間が過ぎ去った。 まだ、直昆の痕跡が見つからない。 この世界の香はまやかしだったのか? 会社も順調、テリトリーも広がった。 どこの世界も似ている。欲という化け物が住んでいるのだから。 動いても疑われない資金を稼ぎ、あの者達に見つからないよう、この世界に溶け込む。 多少のズルに後ろを向いて目をつぶり、動きやすいようにして来た。 私達の隠れ家と仲間を護る為。あのもの達がここにいないと言う保証はない。 珍しく豪が私の所にやってきた。 「オイ、社長様もしかしたら、見つかったかもしれない。」 『豪、本当か!それなら優を呼び戻して…』 「呼び戻しは、アウトじゃねぇ?このあたりの香が強いって言ってたから、店始めて待ってた。 募集見て来たのがいて、そいつからいい匂いするんだよ。でも、そいつ男だ。」 『男?』 「ああ、男だ。この世界の男。年は18才、両親は不明、えぇーと名前は卜部燐華だ。 確か、人間にはない匂いだったな。」 『雇うのか?』 「とりあえず雇うことにした。明日から来ることになっている。」 『そっちは任せた。明日にでも優を行かせる。』 「了解!じゃぁな、ボス。」 直昆の通り名は燐華だ。こんな偶然あるのだろうか?
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