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「…瑞希くん…?」
不意に菜花に声をかけられて我に返った。
彼女は不思議そうな、でも心配そうな顔をして覗き込んでくる。
どうしたの、と問うような瞳。
瑞希は無理やりに笑って見せて、なんでもないように振る舞った。
「ごめん。ボーッとしてた」
せっかくのデートなのに心ここにあらずなんて、菜花に対して失礼にも程がある。
わかっているのに、母の言葉が頭にこびりついて離れない。
今さらなんだよ。
この8年間なにもしてくれなかったくせに、急に母親ぶって。
口でならどうとでも言える。
俺が望んでいたのは、そういう見せかけだけのことじゃなかった。
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