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大学を中退して地元に戻ったばかりだった。
就職先は愚か、バイト先すら決まっていない。完全に人生の負け組、落ちこぼれ。
唯一の救いは『女』ってこと。昔から結婚に憧れていたし、永久就職なんて素晴らしい響き。左手薬指にシルバーリングをはめて
「今日の夕飯は何にしようかしら?あら大変、もうすぐ子供が学校から帰ってきちゃう!困ったわぁ」
なんて……幸せよね。
けど現実は違う。こんな中途半端な私を迎え入れてくれる男も企業もない。自力でお金を稼がなくてはいけないし、引越しで散らかった部屋を自分のためだけに片付けなくてはいけない。
母からはもう22才なんだしと、実家に戻るのではなく近くにアパートを借りて住むようにと言われた。
とにかくお金が必要だ。部屋の契約にはお金を出してもらえたけど、来月からの家賃はなんとしても自力で払わなくてはいけない。
部屋に山積みにされたダンボールをぼんやり眺めてそんなことを考えていた。ダンボールは2,3段に積まれたものが4セットほど並び、狭いワンルームをより狭くさせた。
このダンボールも整理しなくてはいけない、やる事は山積みだ。部屋を片付けて、仕事を探して……。
もう22才なんだし……母の言葉が私を呪ったように脳裏にこだましていた。
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