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「ていうことで、明日の夕方、先生が原稿届けてくれる予定だから、ついでに箱崎さんを紹介するよ」 「わかりました。今日の内に先生の作品、早速、読み返してみます」 「そういえば、ファンだって言ってたっけ?」 「はい」 匂坂先生の小説は、連載が決まる前から幾つか読んだことがある。若者の日常の描き方が上手で、共感できる部分が多い。繊細かつ骨太な筆致で綴った物語は、じんわりと読み応えがあり、若者のファン層が厚いのも納得できる。 初めて匂坂先生の書籍を見かけたときは、凛翔先生の字を思い出した。 先生の名字と同じ匂坂。読み方が違くて、意識した自分を笑った。 今はもう凛翔先生と重ねることはない。 「ちなみに今、彼女いないらしいよ」と、ニヤニヤ笑った。わたしに男っ気がないからこうやってたまに冷やかしてくるんだ。 「仕事とプライベートを混同する余裕ありませんから、そういう情報はいらないです」 「そう?色恋営業でもして、顔出しする権利を勝ち取ればいいと思ったんだけどな」 「それって思いっきりキャバクラじゃないですか」 笑いながら、先月の匂坂先生の小説のページを開いた。
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