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最上級のさよならを! きっと心が麻痺している。目の前の重要書類をシュレッダーにかけるための処分用の紙と思ってしまうくらい 彼女に恋人ができたそうだ。 一緒に過ごしてきた時間はあいつよりも長かったのに。 「やぁ、仕事は順調?」 声をかけてくる同僚にかろうじて応じるほどの気力はあるようだ。いつものような笑顔ではいられなかったけれど。 エレベーターに乗り込み、登っていく景色を無心で見つめる。屋内に入って暗くなった中のガラスに、自分の顔が映り込む。 伸びかけの襟足を切ってくれたのも彼女だ。少し揃いすぎているのも、オリジナルだと自分の髪型を見るたび誇らしかった。 手に持った書類の端が潰れている。手を元にして根っこがのびるようにシワになっていた。ため息をつく。 「俺のこと、なんでもなかったんだ。ただの友達として今まで仲良くしていたんだね」 恋人ができたことを本人から告げられたとき、静かにその言葉が滑り落ちてきた。喉の奥に止めておく隙もなかった、だって0コンマ数秒で滑ってきたから。 戸惑った表情をみせたあと、その場を取り繕うように一生懸命笑顔で話す彼女を、俺はただ頷いて聞いているようにして、出されたコーヒーの苦味をすすっていただけだった。 「あなたのこと、友達として、大好きよ。」 「たとえば俺とあいつの違いって、なに?」 健気に笑顔を作っていた、俺を勘違い男にした事に罪悪感を感じている彼女に、今まで味方にしか見せなかった面をあえて外す。 彼女は嫌な女だ。そして、それと同じくらいいい女だ。 男に魅せるためのその仕草も、ファッションも、嫌な女を感じさせないためにつけた香水の匂いもアクセサリーも、全部、魅力的だった。まんまとその罠に俺はかけられた。 「あなた、男として魅力的じゃないもの」 類は友を呼ぶ、っていうように、見た目に寄り付くやつにはそれ専用の報酬や報復が返ってくる。 はぁ、今回の恋愛はこれでおしまい。襟足はまた、いきつけの美容院で切り直してもらいに行くんだ。
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