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じゅう
「今日、出かけようよ。雪も大分おとなしくなったしさ、予報でも晴れだって。」
寝坊できる朝に、ニュース番組の天気予報を見ながらリンクが洗面台にいる私へ声をかける。
寒いのはキライだ。今だって靴下を履かずに移動したたった一瞬の間に、体温が床に奪われた。顔を洗うために蛇口からお湯を出すと、私の周りが湯気で包まれる。見えない。
「ねー、いこうよ」
だるだるのダルメシアンのように間延びした問いかけを尚、こたつに足をつっこんだまま投げかけてくる。
手にすくったお湯めがけて顔を突っ込む。あったかい。つまっていた鼻も通る。
言葉の通り底冷えした足を交互に踏みながら顔を洗い、脇に置いたタオルを取ろうと腕を伸ばす。スカ。
「ねぇねぇ、タオル欲しい?」
「...お湯が水になる前に返して」
「じゃ今日デートしようよ、久しぶりに2人で外で遊ぼう?」
「しゃむい」
「返してほしくばイエスと答えよ」
「外寒いの~」
「手つなげばあったかいでしょ?」
「トイレとかどうするの~」
「えっトイレ?ん~~、じゃカイロを貼ろう、貼ってあげる」
リンクの口車に乗せられて、渋々外に行く事になった。話の決着がつくまでに既に滴っていたお湯は水になり、湯気は周りに結露した。
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