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「は?」
いきなりどうしてしまったんだ?
「名前に何がありましょう? 私たちがバラと呼ぶ花は、例え別の名前で呼んだとしても同じように香るはず」
「……は?」
ジャックがしなを作り、祈るようなポーズをする。
「おお、ロミオ。あなたはどうしてロミオなの?」
ああ。それって悲恋の代名詞である、あの。
「私の敵はあなたの名前。どうかその名をお捨てになって。それが無理なら、せめて私を愛すると誓って。そうすれば私がキャピュレットの名を捨てましょう」
さすがは舞台役者。そこにいるのはもうジャックではなくて恋に身を焦がす可憐な乙女だ。わざとなのか若干のピエロ感は拭えないけれど。
でも、どうして急に?
当惑する僕にジャックはにっこりとした。
「名前なんてひとつの記号さ。どんな名前で呼ばれたって、オレはオレ。キミはキミ。それで充分だろ?」
そう……だろうか?
結局ロミオは名前を捨てなかったし、ジュリエットも墓の中までジュリエットで居続けた。だからこそあの悲劇も成り立つんだし、際立ったのでは?
「あー、お腹すいた。上演代としてなんか買ってきて、ヘラルド」
はぐらかされた? この人、案外食えない人物なのかもしれない。
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