117人が本棚に入れています
本棚に追加
______________________
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「やあ来たね、ヘラルド」
衣裳の他に小道具や台本なんかが雑然としてるこの部屋には、何故かひとつだけ机がねじ込まれている。
ジャックが椅子からにこやかに立ち上がって手を差し伸べてくるので、こちらも例のチケット代を手渡す。その場で早速新聞を開くジャックの肩越しには、それまで彼が向かい合っていた机の様子が窺えた。
「ずいぶん散らかってるけど?」
机の上にはたくさんの戯曲が並んでいる。演劇理論や考察書がその脇を固め、さらには一般の書籍も他数。タイトルがすり切れるほど読み込まれているものは過去にジャックが演じた台本だろうか。
それらに混じって、何やらびっしりと書き込みのある紙が何枚もほうぼうに積み重なっている。
「んー。次の公演用の脚本」
「今度はどんな役?」
「いや、まだ書いてる途中」
「え?」
書いてる?
「役者っていうのは仮の姿。本当は作家志望なんだ」
驚いてる僕を愉快そうに眺めて、ジャックがふふふと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!