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棚にはシェイクスピア関連の資料が群を抜いて多い。戯曲の他に歴史書、作品ごとの通解や当時の世俗をまとめた書籍。
背表紙にはシェイクスピアの紋章──金の地に黒の斜め帯、その上に金の槍──が描かれている。
この槍はシェイクスピアの《スピア》の発音を槍の《スピア》にもじったもので、このような洒落をきかせた紋章をカンティング・アームズという。
このシェイクスピアの紋章は、イギリスの数ある紋章の中でも五本の指に入ると言われるほどの秀逸なデザインとして有名だ。
「シェイクスピアは好き?」
劇聖の誉れ高いシェイクスピアは日本にも数多くのファンを持つ。もちろん僕だってその例に漏れない。
けれど、祖父の件があってからはシェイクスピアを見る目が変わった。彼が無類の紋章通であり、作品の中にも紋章用語が巧みに組み込まれているということを知ってからは。
紋章の国イギリスといえど、彼ほど見事に紋章学を表現方法として花開かせ、物語に奥行きを持たせた作家は後にも先にもいない。
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