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このところ、僕は家にいるよりもジャックと一緒にいることのほうが増えていた。
こんなに入り浸ってるのに新聞だけじゃさすがに悪いので、自然と食事は僕が差し入れるようになった。と言っても、ほとんどはサンドイッチだ。フィッシュアンドチップスを始め、他のワゴンフードは味に当たり外れが大きい。でも、ロンドンのサンドイッチはどこも具材がバリエーション豊富で、安くて美味しいのだ。
ジャックは舞台から戻るなり、いつも喜んでそれを食べた。人前で声を張り上げ、大きな身振りを交えて長い時間ひとつの役を演じきるのだから、それは相当に消耗するのだろう。それでも毎日サンドイッチではやっぱりそろそろ限界だろうか。
今日は少し遠回りして違うものを買ってみよう。まだ開演まで余裕はあるし。
信号が変わり、つい人の流れよりもストリートに並ぶ飲食店に目を泳がせて歩いてしまう。結果、代償に反対方向から来た人とぶつかってしまった。
「す、すみません!」
相手が落とした荷物を拾おうと手を伸ばしたところ、見覚えのあるタイトルの本が目に飛び込んだ。
「ああ、君か」
脳天に聞き覚えのある声を浴びて振り仰ぐと。
「あ……」
それは今までにも何回か遭遇したことのある、例の紳士だった。
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