シニスターの槍

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 お目当ての舞台を満喫して劇場を後にすると、時刻はすでに昼日中を回っていた。  午後の部はどこもだいたいは三時ごろからの開演だから、行こうと思えば今から別の劇場に飛び込むことも出来る。ただし、売れ残りの席になるけれど。  いっそのこと、この後はウエストエンド観光にいそしんでしまおうか。 有名サーカスの金の天使像。流れてくるミュージック。近代的で鮮やかなネオン。夢見心地の余韻をおみやげに帰るなんて最高だ。  あてもなく他の観光客のように景観を眺めながら移動していると、ある小劇場の前にたどり着いていた。 イギリスの古典的な演劇場を模倣した円形建ての三階桟敷。なんと木造で出来ている。 まるでシェイクスピアの時代にタイムスリップしたかのようなその外観は、ウエストエンドにひしめいている壮観の大劇場たちとは完全に趣を異にしていた。
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