シニスターの槍

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 握り締めた手のひらにひやりとペンが触れる。 『持ち上げた時に転がってきて、初めて気づいたんだ。だからどっちを向いてたかまでは……悪いな』  ──ヘラルド《herald》 伝令に使者に告知。そして、それは新しいものの到来を告げる先触れという意味の言葉でもある。君がまっさらな紙にしたためた、最後の言葉。 『来たね、ヘラルド──』  踵を返して劇場に背を向けた。一歩を踏み出せば、そこには左右に大きく道が開ける。  ジャック。君はこの道のどちらに顔を向けて発っただろう。  彼の見つめたその先は、誰も知らない。
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