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腰に手を当てながら熱心に新聞を読みふける人物がそこにひとり。しかも、ただの人間じゃない。
ピエロだ。サーカスとかで小粋におどけるあの陽気なピエロが、すぐそこで真剣な表情をして新聞を読んでいる。
ニカッと笑ったペイントをしているのにその下の表情はちっとも笑っていないものだから、ひどくちぐはぐな印象がする。
「ああ、もう最終リハ? ちょっと待……」
そこでようやく、ピエロが僕の存在に気づいた。
「えー、と。新しく入った人?」
とっさに声が出てくれなかったものだから、とりあえず首を数回横に振った。間近で見るとピエロって怖いものだ。しかも無表情のピエロ。
相手は相手で僕を不思議そうに眺め、次の瞬間さも思いついたと言わんばかりに、ああと声をあげた。
「ヘラルドか!」
紋章官──?
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