第1章

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避難シェルターから離れ、放浪生活を続けること一週間後の今日。 僕の連れの女の子、美緒のワガママで見知らぬ地域の中学校に不法侵入していた。 立ち入った教室は、机や椅子の類が一切なく、割れた窓ガラスの破片がそこかしこに散らばっている。 ひび割れた黒板には、嘆きと怨嗟の言葉の数々が書き殴られていた。 「『死にたくないだって』」 美緒が馬鹿にするように鼻を鳴らす。 「誰だって死にたくないのにね。……隕石なんかに押し潰されて。無意味に」 「美緒」 「……ごめんね。恨み言聞かせちゃって」 美緒は、悲しげに微笑んだ。 「ねえ?告白していい?夢だったの……放課後の教室で好きな男の子に告白するの」 「いいよ」 「死んでください。私と一緒に」 「……それは脅迫じゃないの?」 「告白だよ」 「そっか」 「で、お返事は?」 「いずれね」 もし、明日世界が終わるならーー僕は大好きな女の子の幸せを一心に願うだろう。
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