Garble mail

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 だから、『ドール』は人間を殺さない。自殺もしない。  ……『主』がいる内は。  同胞のために弁明するけど、『主』が死んだからって、人間を殺そうとするのは、狂った『ドール』だけだよ? 「悔しいのはわかる。だが、頭を冷やせ。お前のチップに記録された映像が在るだろう? アレが在れば罪に問えるんだ、だからさ────」 「は、ご冗談を」  罪に問える? だから?  そんな程度で、済ます気はさらさら無い。 「おい、サリュ!」 「ありがとうございました。このご恩は忘れません」  私は狂言男に捕らえられる前に、外へ飛び出した。そのまま全力疾走。狂言男は追い掛けて来なかった。  あの男は、現在、家族がいるらしい。再婚した。子供も、いるんだとか。  ゆるせない。私はまず男の国へ渡ることにした。  費用なら在る。私名義の、私のための口座を旦那様が作って置いてくれたから。『ドール』でもペットといっしょで、後見が付けば財が持てた。私の後見は旦那様の従姉殿だった。面識は在った。連絡したら、私を『ドール』と知らない彼女はやや涙ぐんでいたようだ。 『ドール』の私にもちゃんと給料を入れてくれていた旦那様。  いつか、いつか返したかった。  文字化けメール。  もっと早く、感付いていたら。  返せたんだろうか。  いつか。  返せたんだろうか。 『ドール』には涙腺が在る。異物を流すために。  感情に任せて流すのは。 「……」  今日で最後だ。    【Fin.】
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