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暑い日だった。
雲一つない真っ青な空からは地上のもの全てを焼き尽くそうとサンサンと日が照りつけ、庭からは無数の蝉の音が大合唱を奏でている。
そんな中、輝弘は庭に面した渡り廊下の上で横になっていた。
クーラーがついていないこの家では、中にこもるよりは風に近い縁側で横になっていた方がマシだと考えたのだ。
しかし、そんなもくろみは見事に外れた。
今日は風などはまるで吹いておらず、ひさしが作る日陰にいるにも関わらず熱気が体を焼き、大量の発刊と体温の異常上昇を引き起こしてしまっている。
先ほどから鳴り響く蝉の大合唱も暑苦しいことこの上なかった。
そう思い、のそりと重い動作で右手を頭の上辺りに伸ばした。
そこにあるボタンをぽちっと押す。
途端に、若い女性のものであろう涼やかなボイスによる子守唄のような旋律が流れ始めた。
輝弘が押した物はカセットテープのボタンだった。
蝉の音に負けぬよう音量を上げる。聞いていると、幾分気持ちも楽になった。
相変わらず意識は霞がかったような状態だが。
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